インドで頻発する「レイプ事件」と「トイレ事情」の密接な関係
本当に、インドは危険な国である。
その他、記事の最後に、中国・バングラデシュ・インドネシアについての記載もある。
特にコメントはしないので、読んでみると非常に参考になる。
日本に生まれたありがたみが分かるだろう。
以下、全ての記事の赤字・太字は管理人による。元々、見出しや太字だった部分は、アンダーラインで表示した。
https://www.sankei.com/world/news/180707/wor1807070001-n1.html
2018.7.7 12:00
5億人が屋外排泄の国 進むトイレ改革 設置しても「不使用」続々…立ちはだかる宗教の壁
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人口13億を抱えるインドで、公衆衛生革命が進む。改革の対象となっているのがトイレだ。インド国内だけで5億6425万人(国連児童基金=ユニセフなどの推計)が屋外で用を足しているとされ、感染症のほか、性的暴行事件の温床とも指摘される。宗教的背景から設置が進まないなど、単なる衛生問題ではない複雑な問題もはらむ。トイレを通して、インド社会が抱えるさまざまな側面が見えてくる。
「誰も使わない」
「この村には95%の家庭にトイレが敷設された。政府のキャンペーンの大きな成果の1つだ」
首都ニューデリーから車で3時間ほど。北部ウッタルプラデシュ(UP)州で、政府主導でトイレが行き渡ったというガダワリ村を訪ねた。政府からの嘱託で設置活動を推進したアショク・シャルマさんは、冒頭のように胸を張って成果を強調した。
ガンジス川沿いの人口500人ほどの小さな村落には、確かに各家庭の庭先にコンクリート製のトイレが設けられていた。過去にトイレを持つ家庭は皆無だったが、2015年から政府の援助で設置が始まった。
だが、話を聞くと、とても誇れるような状況ではないことがすぐに分かる。「建てられた99%が使われていない。政府は本当にただトイレを作っただけだから」と話すのは、住民のジュマン・ラナさん(25)だ。わずか3年前の設備にも関わらず、多くはドアが壊れ、使用されている形跡がない。
https://www.sankei.com/world/news/180707/wor1807070001-n2.html
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トイレこそ完成したが上下水道は整備されず、埋設されたタンクのくみ取り作業もない。雨期には排泄(はいせつ)物があふれかえり、悪臭が漂ったという。農機具や、インドでよく見られる牛ふんを乾かした燃料を詰め込むなど、物置として使われることがほとんどだ。
村人は依然として道端や草むら、線路をトイレ代わりにしている。その一人、シャンティ・デビさん(32)は女性だが、夜にひっそりとガンジス川河川敷に行って用を足す。藪の中は、毒蛇にかまれたことがあり、避けたいという。「外は恥ずかしいし、怖い。それでも家のトイレでよりは清潔だ」と、デビさんは話した。
こうした状況は、ガダワリ村にかぎった話ではない。インドのあちこちで起きているのだ。
携帯電話は10億台だが…
14年5月に就任したモディ首相が、8月の独立記念日の演説で触れたのが「トイレ」だった。「女性たちは外で不便を強いられている。母や姉妹の威厳を守るためにトイレを作ることはできないのか」とぶち上げ、満場の拍手を浴びた。
インド政府は、モディ氏の強い意向で、トイレ設置計画「スワッチ・バーラト(クリーン・インディア)」プロジェクトを立ち上げた。19年までに屋外排泄ゼロを目指し、約1億2千万世帯へのトイレ新設を目指す。
https://www.sankei.com/world/news/180707/wor1807070001-n3.html
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世界で日常的に野外での排泄を強いられる人口は約9億5千万人と推計されているが、インドはその半数以上を占める。携帯電話の普及台数が10億台を超え、7%以上の経済発展を続ける中、トイレに関しては極めて立ち遅れている。
インドで幼児(5歳未満)の死因の17%は下痢とその合併症だが、原因の8割が排泄物に含まれる雑菌の経口感染だ。専門家からは、井戸や水源付近で排泄が繰り返され、水が汚染される状況が指摘される。
トイレがない現状は別の危険も引き起こす。UP州では14年5月、用を足すために家の外に出た10代の少女2人が複数の男に性的暴行を受け、殺害される事件が発生した。少女たちの遺体は木につるされて見つかり、社会に衝撃を与えた。各地では、このように野外で女性が性的暴行被害に遭うケースが頻発している。
排泄中に野犬や蛇に襲われることもあり、「トイレだけで身に危険が付きまとう」(デビさん)という表現は大げさではない。
宗教的価値観の壁
インドの家庭にトイレが根付かないのは理由がある。排泄とその処理が、インド最大の宗教、ヒンズー教の考え方と密接に関係するからだ。
ヒンズー教では「浄」と「不浄」という概念が重視される。「トイレは不浄で遠ざけるべきものという意識は伝統的に根強い」と話すのは、インドで衛生環境の改善に取り組む非政府組織(NGO)、「スラブ・インターナショナル」広報のマノジ・ジャハ氏だ。農村部では家を建てる際にヒンズー教の僧侶がトイレを建てないことを勧めることもあるという。家から「不浄」を切り離すためだ。
https://www.sankei.com/world/news/180707/wor1807070001-n4.html
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インド社会に隠然と残るヒンズー教の身分制度「カースト」も影響する。高位カーストが不浄な職に携わることは基本的にありえない。排泄物処理など不浄な作業は、基本的には下位カーストの仕事という認識が根強い。
ガダワリ村のケースの通り、上下水道が整備されていない地域で、トイレはくみ取り式が多い。掃除や処分は「低カーストの人たちの仕事」という抵抗感から敬遠される。その結果、トイレを設置しても誰も管理しないため、使われなくなるケースは絶えない。
政府の発表によると、クリーン・インディアプロジェクトで、14年10月には38%だった全国の自宅用トイレが、今年6月には86%に達したという。政府は成果を強調するが、専門家は「実際に使われているかは別問題だ」と指摘している。
「意識の変化を」
モディ氏は演説で、「トイレが第一、寺院はその次」とも述べた。あえて宗教よりも、公衆衛生の優先順位は高いと言及したのだ。モディ氏が進めるトイレ改革は、インド人の考え方を変えていく作業にほかならない。
インドで貧困問題に取り組み、アジアのノーベル賞といわれる「マグサイサイ賞」を受賞したベズワダ・ウィルソンさんは産経新聞の取材に「インドを清潔にしようという活動は意義としては賛同できる」とした上で、「カーストの問題を放置していては、抜本的な解決にならない」と断言している。
https://www.sankei.com/world/news/180707/wor1807070001-n5.html
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インドでは、下水が詰まった際、排水管内部に入って手作業で清掃する人たちが3万人ほどいて、全員が低カーストの人たちだという。衛生状況は最悪で昨年は有毒ガスや感染症などにより、約850人が死亡したとされる。ウィルソンさんは「不浄なことは『すべて下位カーストに任せる』という思考が国民に染み込んでいる。トイレ改革を通じて、インド人の意識が変わることを願う」と話している。
「トイレ改革」国際的なテーマに 中国では習氏が改善の大号令
トイレ改革はインドに限った話ではなく、世界各国で改善に向けた取り組みが進められている。国民の支持を得やすい身近なテーマであると同時に、対外イメージの向上にもつながるためだ。
中国では、指導部の大号令のもとで「厠所(トイレ)革命」が進む。習近平国家主席の肝いりの政策の一つで、公衆トイレの新設や改修を進めるほか、農村部のトイレを改善することで、衛生環境の底上げを図る。習氏は昨年11月、目標を上回る6万8000カ所のトイレが整備された状況を称賛。さらなる設置を指示した。
中国の公衆トイレは仕切りがなく、利用時に他の利用者と向かい合いになることから、「ニーハオ(こんにちは)トイレ」と揶(や)揄(ゆ)され続けた。国際的な悪評を払拭して、観光客増加にもつなげたい考えだ。しかし、トイレに執心する習氏への忖(そん)度(たく)が行き過ぎたのか、ソファ付きの豪華な「五つ星トイレ」も登場し、「やり過ぎだ」との批判を集める事態にもなった。
https://www.sankei.com/world/news/180707/wor1807070001-n6.html
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バングラデシュはインドより前にトイレ改革に着手し、成功した国の一つだ。2003年に43%だった屋外排泄率を、15年には1%まで減らした。毎年、国の開発予算の4分の1をトイレ設置に使用。特に屋外で用を足すデメリットの周知活動に力を入れた。地元NPO関係者は「トイレだけ作っても意味がなく、教育こそ重要だ」と話す。
インドネシアでは1990年時点で、40%の国民が家庭にトイレを持たなかった。過去には衛生状態の悪さから5万人の死者が出ており、経済的損失は63億ドル(約7000億円)とも推計され、国を挙げたトイレ設置キャンペーンが展開されている。(インド・ガダワリ村 森浩)
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商品の説明
出版社からのコメント
タブー視されているテーマを、あえて大胆に語り尽した本。世界の26億人にはトイレがない。
飲料水に下水が混入している国(なんと先進国!)もある。
「水と衛生」は、地球規模の深刻な問題だ。
知らぬ間に、糞尿の海に囲まれている私たちの窮状を、
ユーモアをまじえて綴った環境(エコ)ルポルタージュ。
内容(「BOOK」データベースより)
日本ではハイテク化が進み、アメリカや中国ではバイオ肥料など、排泄物の有効利用が脚光を浴びている。一方、トイレがない、あるいは、あっても汚すぎて道端でしたほうがましという人も、世界には26億人いる。「なぜ、トイレ?」という周囲の冷たい視線をよそに、突撃型の女性ジャーナリストは、トイレを追いかけて西へ東へ大奔走!英『エコノミスト』誌の2008年ベストブックス選定図書。